プロダクトレッドグロース (PLG)

なぜPLGが注目されているのか

前回の記事では、DXやデータドリブン戦略、そしてPLGの基本的な考え方についてご紹介しました。簡単にPLGについて振り返ると、プロダクトレッドグロース (PLG) は、プロダクト自体が成長の主役となるビジネス戦略です。PLGの「プロダクト」とは、主にデジタルサービスを指し、特にSaaS業界で注目されています。PLG戦略は、優れたプロダクトがあれば自然に人が集まり、プロダクト自体が成長を牽引するという考え方に基づいており、プロダクトの魅力で市場を拡大できる可能性を持つアプローチです。

不安定な経済状況や人材不足などの問題を抱える現在において、戦略なしで成長を目指すのは現実的ではありません。今やあらゆる企業が「少ないリソースでより多くの成果を上げる」ことを求められています。PLG戦略をうまく取り入れることで、営業やマーケティングの支出を削減できます。さらに、顧客が価値を実感してから購入するという流れは、顧客満足感の向上につながるというメリットがあります。

PLGアプローチに見られる主な特徴は、次の通りです。

  • バイラリティ:紹介プログラムや共有機能を通じて、顧客が他の新規顧客を招待する流れ、つまり口コミでの広がりが重要である
  • セルフサービス:簡単なサインアップと、ユーザーフレンドリーでわかりやすい機能、無料トライアルやフリーミアムを提供すること
  • 最小限のやり取り:営業とのやり取りがない、もしくは最小限のやり取りで有料版に変更できる仕組み
  • 顧客中心主義:顧客からのフィードバックを受けてプロダクトを継続的に強化する
  • データドリブン:分析を使用して顧客行動を追跡し、パターンを特定し、顧客体験を最適化する
  • 収益の拡大:収益の増加のために、既存の顧客へのアップセルまたはクロスセルに重点を置く

これらの特徴をうまく実現することで、成功するPLGを構築できます。

PLGのメリットとデメリット

PLGのメリットとしては、プロダクトが自らを売り込むため、営業やマーケティングにかかる負担が軽減され、人的リソースを最小限に抑えながら成長を実現できる点が挙げられます。これにより、より多くのリソースをプロダクト開発や顧客サービスに充てることができ、プロダクトの品質と顧客体験が向上します。その結果、顧客のロイヤルティが高まるという優れた流れができます。魅力的なプロダクトがあることで、顧客獲得コスト (CAC) を削減し、顧客生涯価値 (LTV) を最大化できるのです。

一方で、優れたサービスを構築するためには初期費用がかかります。また、プロダクトが魅力的であるだけでなく、簡単に使えるサービスでないと成果を上げるのが難しくなります。新規顧客がプロダクトを学び、その価値を見出す「オンボーディング」の段階で心を掴まなければ、成功にはつながりません。さらに素晴らしいプロダクトであっても、操作が複雑である、ニーズが限定されている、専門性が高い、高価であるような場合は、PLGには適していません。

前回のブログ記事でもご紹介した営業主導のSLG (セールスレッドグロース) の戦略は、顧客との関係性に重点を置き、エンタープライズソフトウェアやB2Bサービス業界など、複雑で高価値のプロダクトやサービスに適しています。また、マーケティング主導のMLG (マーケティングレッドグロース) は、包括的なマーケティングキャンペーン、リード生成、ブランド構築、ターゲットを絞ったメッセージングなど、さまざまな戦略を適用して成長を実現します。

どのアプローチを取るのかは、プロダクトの性質、対象顧客、ビジネスニーズによって異なります。そして、多くの企業は、成長の可能性を最大限に高めるために、PLG、SLGおよびMLGの戦略を賢く組み合わせています。

Dropbox Capture:オンボーディング体験の改善

PLGを効果的に取り入れている企業の一例として、Amplitudeのお客様であるDropboxがあります。Dropboxは、デジタルコンテンツを一か所にまとめて整理・共有・同期できるオンラインサービスとして、世界中で多くの人が利用しています。同社のPLGアプローチは、まず無料プランで開始し、ストレージが不足した場合や、より高度な機能を利用したくなった場合に有料プランへ移行できるという仕組みです。

そんなDropboxの新サービスに、スクリーンショットや画面録画を通じたコミュニケーションを手軽にするツールDropbox Captureがあります。多くのニーズを見込んで始めたサービスですが、Dropbox Captureの新規顧客のうち、登録初日に実際にスクリーンショットや画面録画を実施したのはわずか半数でした。この課題に対してDropbox Captureは、オンボーディングプロセスにおいて、操作がわかりにくいという問題があるのではないかという仮説を立てました。そして、Amplitude Analyticsを活用し、顧客がアプリ内で何をしているのか、どの機能を使っているかなどを追跡し、明らかにしました。そのインサイトを基に、オンボーディングの流れを根本から再設計し、アクティベーション率を25%以上向上させるという成果を短期間で実現しました。

現在では、Dropbox Captureだけでなく、Dropbox全体でAmplitudeを採用しています。Dropboxは、顧客に優れた機能と価値を提供することに注力しています。その中で、Amplitude Analyticsを活用することにより、どの機能が最も共感を得ているのか、どの機能に対して改善が必要なのかを把握しています。さらに、エクスペリメントや検証時間を短縮することで、価値実現までの時間を大幅に削減しています。Dropboxの事例の詳細は、こちらの記事 (英語) でも紹介しています。

PLGアプローチにおいて、素晴らしい顧客体験を提供することは重要です。その顧客ジャーニーにおいて、Amplitudeのようなプロダクト分析ツールは、大きな力を発揮します。

AmplitudeでPLGを強化する

Amplitudeは、人々がプロダクトをどのように使用し、顧客の行動が成長にどのような影響を与えるかを正確に理解するのに役立ちます。組織全体にわたりデジタル顧客体験を改善する機会を特定し、結果を測定することが可能になります。そして、そのインサイトを生かすことでPLGの実現を支援できます。

具体的な例を挙げると、Amplitudeを活用することで、次のような疑問の答えを得ることができます。

  • 顧客が行き詰まったり、離脱したり、非アクティブになったりするのはなぜか?
  • どのように新規顧客を、アクティブかつエンゲージメントの高い顧客にできるのか?
  • どのようなプロダクト体験が顧客ロイヤルティを育むのか?
  • どのアクションが、より高いコンバージョンと生涯価値の向上につながるのか?
  • 製品、サービスを使いこなしているパワーユーザーの行動を特定し、再現する方法はないか?
  • リピート顧客を増やす機能は何か?

顧客行動データの分析やインサイトを活用することで、顧客に愛され、ビジネスを成長させるプロダクトを作り出し、PLGアプローチを取り入れることで、さらなるビジネスの成功を手にすることができます。

「少ないリソースでより多くの成果を上げる」ためにも、まずは、Amplitudeを実際に体験してみませんか?プロダクト分析のカスタムデモや料金プランは、こちらからお問い合わせください。